コワくないオカルト小説、二本立てで連載中!! 気になるお笑い芸人のオハナシも、地味に暴走しているよ!!
 僕らがまだ、ほんの子供だった頃の話だ。
 タスクおじさんは、時々、こんなことを口にした。
「……俺が有名になったとしても、俺のやってることは、きっとうまく伝わらないんだろうな」
 今にして思えば、おじさんは、自分がいつか有名になることを、知っていたのだ。

「どうして?」と、訊いたことがある。
 周囲の大人が、この叔父をどう思っているのか。子供なりに、解っていたつもりだった。その上で、でも僕らだけには伝わるよ、と言いたかったからだ。
 だから僕らは、こう約束した。
「もしおじさんが有名になって、新聞とかニュースに出ても、絶対に見ないよ」
 新聞なんてテレビ欄しか見ないし、ニュースなんか興味もないのに。いや、だからこそ、約束したのだ。『中原佑』なんて名前を見つけたら、見たくなるに決まっている。
「他人の言うことなんか、信じないよ。だから、もし有名になったら、絶対に知らせてよね」
 つまり僕らは、つまらない文章やナレーションで、僕らが抱く『中原佑』のイメージを、ブチ壊されたくなかったのだ。

『我が弟ながら、一体何を考えてるんだか、さっぱり解らん』
 タスクおじさんの話題になると、父が決まって言ったように。フツーのオトナなんかに、おじさんのことが解る訳がない。だってこの人は、フツーのオトナとは違う世界で生きてるんだから。

 僕は、オトナが大嫌いだった。だから、タスクおじさんに、フツーのオトナを見返して欲しかった。
 叔父が一体何のためにそんなことをしているかも、知らなかったのに。
 
 さくら


 桜の樹の下には、屍体が埋まっている!
 これは信じていいことなんだよ。何故って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて
信じられないことじゃないか。
 

                            (梶井基次郎・著/桜の樹の下には)



 ビクン、として目を覚ました。背後から、殺気のようなものを感じたのだ。
 ベッドに入ったまま顔だけ振り返ると、妹の緋芽が、こちらをじっと覗き込んでいた。
「ねぇちょっと、いつまで寝てんの? もうお昼だよ?」
「……あ? まだ寝たばっかりだよ……」
 海は溜め息まじりに答え、目を閉じた。明るくなるまで友達と騒いでいたから、まだまだ眠いのだ。だいたい今は春休みなんだから、早起きする必要もない。
「いいから、早く起きなよ!」
 緋芽は無理矢理、布団を剥がそうとした。
「ほらぁ、さっさと起きる!!」
「……うるせぇよ、あっち行け、ブス」
 ボスッ!! いきなり脇腹辺りに、蹴りが入った。直撃はしなかったが、海は思わず、飛び起きる。
「何すんだよ、このバカ!!」
「……うるさいなぁ、せっかく起こしてあげたのに」
 憎まれ口を叩きながらも、緋芽はどこか弾んだ調子でカーテンを開けた。
「ほらぁ、もう桜が咲いてるんだよ?」
     お花見
                           五年一組  中原 海

「春になると変な人がふえるから気をつけなさい。」
 先生はそう言うけれど、ぼくのおじさんは、一年中、「変なやつだ。」と言われている。でも、春の作文なので、まずは、お花見に行った話をします。

 この前の日曜日に、ぼくたちは、親せきみんなで、お花見に行った。メンバーは、ぼくの家族(両親と妹)と、いとこのリクの家族(お母さんが、ぼくの父の妹)、ユリおばさん(父の姉)と新しいおじさん(去年再こんした)、ぼくを入れて九人。おじいちゃんとおばあちゃんは、毎年この季節は温泉にいるし、タスクおじさん(すえっ子)と、いとこのコウくん(リクの兄)は、人の多い所がきらいだ。だから今年も、この四人は欠席だった。
 ぼくは、お花見は変だ、と思う。なぜなら、お花見なのに、だれもさくらを見ないからだ。みんな、よっぱらって、大さわぎしていた。
「子どもに、かえったみたいねえ。」と、ユリおばさんが言ったけど、子どもはお酒を飲んではいけない。ぼくはコーラを飲んで、ごちそうを食べた。
 おなかがいっぱいになると、リクがぼくの手を引っぱって、言った。
「ここにいても、つまらないよ。」
 そこで、ぼくたちは、探検することにした。とても広い公園なので、おもしろそうだと思った。妹もついて来た。うちのおひめさまは、本当にすぐなくので、じゃまだけど、ぼくはお兄ちゃんだからしょうがない。
「よそ様に、めいわくかけちゃだめよ。」と、母に言われた。
「そっちこそ。」と、言い返して、おこられる前に、にげた。
 人が多すぎて、いやになったけど、どうにか進んだ。みんなきっと、場所取りの時だけは、ちゃんとさくらを見たのだろう。さくらのない所には、人が集まってなかったからだ。ぼくは、人がうじゃうじゃ集まっているのを見ていたら、アリを思い出して、気持ち悪くなった。

 今までで一番お花見らしかったのは、小さいころ、父と妹と、さんぽをした時だ。近所の公園にさくらがさいていて、とつぜん父が、言った。
「おい、花見しようか。」
 それから、近くのおべんとう屋さんで、ビールとジュースを買って、ベンチに座って飲みながら、ぼくたちは、だまってさくらを見た。その時ぼくは、これが本当のお花見だ、と、思った。