コワくないオカルト小説、二本立てで連載中!! 気になるお笑い芸人のオハナシも、地味に暴走しているよ!!
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「なぁ、カイ。『花見客』って言うけどさ、誰にとって『客』なんだろ?」
 いきなり立ち止まるなよ、海は口で言わずに、膝で軽く陸の尻を蹴った。ただでさえ人が多くてイラついているのに、大柄な陸に道を塞がれたらたまったもんじゃない。
「あ、ゴメン。で、どう思う?」
「……『花見客』なんだから、やっぱ、桜の客じゃねぇの?」

 よく晴れた日曜日、桜が満開の公園。ここらの地面はそのほとんどを、ビニールシートや人と靴、弁当や飲み物と、それらのゴミで覆われていた。この隙間を、三人並んで歩くのは難しい。
「ああもう、歩きにくいったらないよ!!」
 陸はグイッと海の腕を掴み、ついて来いとばかりに、半歩先を歩き出した。海の後ろには妹の緋芽が、はぐれないようにパーカーの裾をしっかり掴んで、まるで金魚のフンのようにくっついている。
「桜が咲いたぐらいで、どうしてこんなに集まってくるんだろうな?」
 海はもう、ウンザリしていた。そりゃあオレらだって花見に来たけど……ごちそうを食べる以外、やることはない。食うだけ食ったら暇を持て余して、親達の宴会を抜け出したのだ。

「なぁ、リク。なんか、あれに似てねぇ? アメとか落とすと、アリがタカってくるじゃん」
 花見に来た人々が、海にはまるで、アリのように見えた。どこからかウジャウジャ湧いてきて、同じエサにタカるアリ。
「オレらは今、巨大なアリの群れの中を、歩いてるんだよ!」
 そう言うと、後ろからグイッと服のスソを引っぱられ、海は首を締めつけられた。
「お兄ちゃん、気持ち悪いこと言わないでよ!!」
 放せバカ、海は振り返って、妹が泣かない程度に頭を叩いた。
「そうだリク、今日、コウくんは?」
「今年もやっぱり、『人の多いトコは苦手だ』って」
「……だよな」
 去年までは「コウくんに花見は似合わない」なんて笑っていたが、今年は違う。
「オレも、人の多いトコは、嫌いだよ」
 こんな所に来たって、イラつくだけだ。
 桜の下に群がった、赤い顔した大人達。そして、人の数だけ転がった靴とゴミと。気が狂ったように笑いながらバカデカイ声でわめき散らしヘタクソな歌を歌い、酒やタバコのニオイとか女の人の化粧とか屋台の焼きソバのニオイなんかがゴチャ混ぜになって……奴らが発する騒音や空気汚染は、海のイラ立ちを爆発させた。

 ここに爆弾を落として、こんなバカな奴らを全部、吹き飛ばしてやりたい。

 ビニールシートの角をおさえるように置かれた靴。海は舌打ちして、それを睨む。そうだ、こんな物をいちいち避けて歩く必要はない。どうして何の関係もない奴に、こんな頭のイカレた奴らに気を遣わなきゃいけないんだよ?
「おい、走るぞ」
 海は知らない奴のスニーカーを思い切り蹴飛ばして、走り出した。わざと選んだ、真新しい白い靴は、ポーンと、晴れた空に飛び上がる。
「ちょっとカイ、待てよー!!」
 陸も緋芽も、慌てて海の後を追う。
 アメ玉にタカるアリのようにウジャウジャ群がる中をひたすら真っ直ぐ、靴もシートも紙コップも重箱までも蹴散らして、たまに人も踏みつけながら、ひたすら真っ直ぐ走り抜ける。
 ヨソ様に迷惑かけちゃダメよ。
 母のセリフを思い出したが、海から見たら、迷惑なのはコイツらの方だ。通り道に座り込んで、オレの邪魔をしやがって。
 向こうから、両手いっぱいに缶ビールを抱えたオヤジが歩いて来た。海は構わず、走り続ける。道を譲る気はさらさらない。
「オイ、コラ待てこのクソガキが!! ブッ殺すぞ!!」
 オヤジは缶をそこらじゅうに撒き散らしたが、ここで立ち止まるつもりもない。
「やれるもんならやってみろよ、パシリのヒラのくせしてよ!!」
 振り返ると、オヤジは不恰好に屈んで、缶を拾い上げながら、こちらをギッと睨んでいた。
 あの缶、すぐ開けたら吹き出すだろうな。オヤジの仲間がビールまみれになるのを想像したら、ほんの少しだけ気が晴れた。 

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