コワくないオカルト小説、二本立てで連載中!! 気になるお笑い芸人のオハナシも、地味に暴走しているよ!!
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 さくら


 桜の樹の下には、屍体が埋まっている!
 これは信じていいことなんだよ。何故って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて
信じられないことじゃないか。
 

                            (梶井基次郎・著/桜の樹の下には)



 ビクン、として目を覚ました。背後から、殺気のようなものを感じたのだ。
 ベッドに入ったまま顔だけ振り返ると、妹の緋芽が、こちらをじっと覗き込んでいた。
「ねぇちょっと、いつまで寝てんの? もうお昼だよ?」
「……あ? まだ寝たばっかりだよ……」
 海は溜め息まじりに答え、目を閉じた。明るくなるまで友達と騒いでいたから、まだまだ眠いのだ。だいたい今は春休みなんだから、早起きする必要もない。
「いいから、早く起きなよ!」
 緋芽は無理矢理、布団を剥がそうとした。
「ほらぁ、さっさと起きる!!」
「……うるせぇよ、あっち行け、ブス」
 ボスッ!! いきなり脇腹辺りに、蹴りが入った。直撃はしなかったが、海は思わず、飛び起きる。
「何すんだよ、このバカ!!」
「……うるさいなぁ、せっかく起こしてあげたのに」
 憎まれ口を叩きながらも、緋芽はどこか弾んだ調子でカーテンを開けた。
「ほらぁ、もう桜が咲いてるんだよ?」
「……え? まさか」
 まだ3月も終わってないのに。海は疑いながら、窓に目を遣った。ここらじゃ桜は、新学期が始まる頃になって、やっと咲くのだ。

 開け放った窓から、花びらが舞い込んできた。本当に咲いてるんだよ、と、言い聞かせるかのように。
 咲いていたのは、裏の家の、古い桜の木だった。

「……なぁ、もしかして、それを知らせるために起こしたのか?」
 暇な奴だな、と思った。天気も良いし春休みなんだから、兄貴なんかに構ってないで、デートにでも行きゃいいのに。
「あたしだって、カイに構ってるほど暇じゃないんだよ」 
 緋芽はベッドの脇にちょこんと座って、ゴチャゴチャ飾り立てた携帯電話を開いた。
「ちょっと待ってね、今、カイにイイもの見せてあげるから」
「……どうでもいいけど、呼び捨てはやめてくんねーかな」
 今さら「お兄ちゃん」と呼ばれても気味が悪いが、せめて人前では呼び捨てをやめて欲しい。この前なんか、学校の廊下でいきなり「カイ~!!」と手を振られ、友達に爆笑されてしまった。
「いいじゃん別に、カイって名前なんだから。それより、ほら見て!!」
 ストラップをガチャガチャ言わせながら、緋芽は携帯の画面をこちらに向けた。
「この顔に、見覚え、ない?」
「……そんなこと言われても」
 桜と思しき大きな木の下に、男が立っているのは、解る。しかし、「この顔に見覚え」も何も、ただでさえ小さい携帯画面に、こんな引きの画像じゃ、顔なんか判らない。
「……情報としては、それで充分だと思ったんだけどな」
 緋芽はガッカリしたような、バカにしたような溜め息をついて、別の画像を出してきた。面倒くせえな、と思いながらも、海もそれを覗き込む。

「……ちょっと待て、これってまさか……」
 鳥肌が立った。
 桜の木の下にいた男のアップは、正直、これといって特徴のある顔ではなかったが。
「……これって……タスクおじさん、だよな?」
 幼い頃に慣れ親しんだ身内の顔だ。さすがに海も、その忘れかけてた顔と名前を思い出した。
「そう!! タスクおじさん!! テレビに出てたの!!」
「……テレビに? おじさんが?」
 そして、何年ぶりかで口に出したその名前は、奥底で眠っていた記憶を鮮明に呼び覚ました。
 
「……そうか、とうとう有名になったんだ……」
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