コワくないオカルト小説、二本立てで連載中!! 気になるお笑い芸人のオハナシも、地味に暴走しているよ!!
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 宮尾英次、19歳。交通事故のため、現場にて即死。

「ちょーっとトーマ!! 何モタモタしてんだよ、もうコア出てるよほら!!」
「……あ、すいません」
「じゃあ今度はボクがデータ照合やるから、リードの方、やって!!」
「……はい」

 2件目の回収は、俺を再び憂鬱にさせた。

 俺はすでに、1件目のショックからは立ち直っていた。俺が『実行』ボタンを押した途端、爺さんの実質的な死が確定されたことについて、だ。
 なんだか俺は、自分が爺さんを殺してしまったような気がしてならなかったんだ。

 ハンディスキャナは無機質な音を立てて、データを記したラベルを排出し、水野サンはテキパキと、爺さんのコアを回収した。コア、つまり魂は、吸引機のような物(コアリーダー)で、密閉容器(コアケース)に詰め込まれる。その一連の作業を、リード、またはリーディングと呼ぶのだ。

 あのね、トーマ。と、水野サンは言った。

「ボクらが何もしないで放っておいても、爺さんは死ぬの。
死神なんて呼ばれてても、生き死にを左右する力なんか、ないの。
ボクらにできるのは、ただ集めて、運ぶだけ」

 そう、俺の仕事は、要するに廃品回収だ。いや厳密には、廃品は肉体の方なのだが……細かいことはまぁいい。とにかく、それに関しては、俺の中で整理はついた。
 
 もし宮尾が、19歳以外の年齢で、バイクにも乗ってなかったら。俺はここまで、憂鬱にはならなかっただろう。
 つまり俺は、宮尾英次の死に、自分を見たのだ。
[『ボクのしごと、キミのしごと』第9話~死神が行く〈case:2〉~]の続きを読む
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 春日良吉、91歳。老衰のため、自宅にて死去。

 広い座敷の真ん中に、その爺さんは、ふわりふわりと、漂っていた。窓際のベッドで、まだ微かに息をしている“自分”と、それを取り囲む人々を見下ろしながら。

《いやぁ……大往生なんだから、そんなに泣くこたぁないんだよ》

 爺さんは一人ひとりに語りかけながら、手を握ったり、頭を撫でたり、抱きしめたり。集まってくれた家族や親戚や友人達に、別れの挨拶をするのだった。

「なんか、ホームドラマみたいっすね!!」

 俺は不謹慎にも、ある種の感動すら覚えていたが、水野サンの目は冷ややかだった。

「……いやトーマ、ドラマ見てる場合じゃないから。まずデータ照合ね」

 一瞬、もしかしたら仕事になるとキャラが変わるのか? と思ったが。

「タララタッタラ~♪ ハンディ~スキャナ~!!

 奴は『ドラえもん』の如くポケットから道具を取り出し、ダミ声で説明を始めた。

コレでコアのデータ照合をするんだよ~。ココのボタン押しながら~、わかった? のび太くん
「……ああ、ココですね、はい……」

 誰がのび太くんだよ、まったく。俺は突っ込みたいのを我慢して、ハンディースキャナ片手に、爺さんのコア(幽霊?)に近づいた。

《……まったく、一人ぐらい返事をしても良さそうなものを……》

 爺さんは、誰にも声が届かないことが、不満らしかった。自分は既に肉体を離れているのに、誰もこっちを見向きもしない。ベッドに横たわる、いわば爺さんの“抜け殻”を、ある者はその手を握り、ある者は涙を浮かべ、皆祈るような面持ちで見守っているのだった。
 おじいちゃん、死なないで。と。
[『ボクのしごと、キミのしごと』第8話~死神が行く〈case:1〉~]の続きを読む
 ①ハンディスキャナの「データ照合」を押し、コアに当てる
 ②「承認番号」を確認⇒「実行」
 ③「ラベル印刷」⇒「実行」
 ④指定色のコアケースに、コアを「リード」⇒「実行」


「……『ハンディスキャナ』? 『コア』?」

 これは、イメージを裏切る以前の問題だ。

「……あの。何となーく、流れは掴めるんですけど」

 専門用語だらけの水野メモ、さっぱり意味が分からない。

「あー……そうか、そこから教えなきゃならないんだ……」

 そして明らかに面倒臭そうな指導員、水野。
 車はとうに川(じゃなくてお堀)を抜け、再びまた道なき道を走っていた。そして俺の心も、また然り。

「……あのね、集める『コア』ってのは気体だから、密閉容器に入れるのよ。それが『コアケース』。で、『リード』はコアをケースに入れることで、入れたらラベル貼るの、どこの誰のコアか分かるように
 ……意味分かる?」
「……分かるような、分からないような」
「まぁ、やれば分かるよ!! 仕事ってもんは理屈じゃなくて実践だから!!」
「……はぁ」

 まぁいいか。つーか、もういいや。俺は俺なりのやり方で、ゆっくり仕事を覚えよう。
 俺は水野メモを胸ポケットに押し込んで、深呼吸をした。
 
「……なんか、イメージより近代的なんすね」
「だ~よね~。実はボクも面接で、『黒マント着てデカイ鎌持つんですか?』って聞いちゃったもん!」
「……まぁ、普通そういうイメージですよね」
「ね、それなのにツナギって!! イメージ通りなのは生地の色だけだよ!!」

 その点に関してはむしろ、イメージ通りじゃなくて良かった。黒のツナギも胸元の『中有運送』ロゴワッペンも、それなりにオシャレと言えなくはない。

「いよいよ向こう側に抜けるよ、トーマ」
「……え!?」

 突然、カオスのような白い闇の奥に、四角い物体が現れた。
 車が進むにつれて、どうやらそれが、向こう側へのゲートらしいことが分かってきた。

「あの……上の方が、なんかピカピカ光ってるんですけど」

 車が近づくにつれて、ピカピカ光っているその中に、何か文字が見えてきた。

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 今日もお迎えご苦労様です。●●
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[『ボクのしごと、キミのしごと』第7話~中有運送、正式名称~]の続きを読む
「鎌ァ~!? またベタなこと言うねキミは!!」

 水野サンは爆笑しながら、ゴソゴソとツナギの胸ポケットを探り、何かを俺に放って寄こした。

「それ、人に見せちゃ、ダメだからね」

 それは、小さく折りたたんだ、紙だった。
 俺は少し緊張しながら、ゆっくりと開いてみる。
 話の流れからすると、中には『実務内容』が書いてあるに違いない。早く見たいような、もうちょっと先に延ばしたいような……何だか通信簿を貰った時のガキのような心境だ。

 しかし、そんな懐かしい気持ちも、例によって、水野サンにブチ壊された。

「ボクらの仕事はねぇ、簡単に言うと……まぁ、廃品回収かなぁ?」
廃品回収!?」
「うん。そんで、まだ使えるものは、リサイクルに回す」
リサイクル!?」

 水野サンの生々しい言い草に、俺は動揺を隠し切れなかった。

「おい!! もっとマシなメタファーはないのか!?」

 思わず、タメ口で突っ込んだ。
 しかし、水野サンは、気にしない。

「トーマ、あと少しで、最初の回収先に着くからね~」
「……はぁ……回収先……」

[『ボクのしごと、キミのしごと。』第6話~廃品回収~]の続きを読む
 道は相変わらず見えないが、青く塗られた標識を境に、明らかな変化があった。なんだか物凄い勢いで、水が跳ね上がってきたのだ。

「……水野サン、なんかスゲエ、バシャバシャ言ってんですけど」

 フロントガラスから見えるのは、尋常じゃない水飛沫と、それを激しく振り払うワイパーのみだ。
 水野サンは前のめりになりながら、アクセルを強く踏み込んだ。

「トーマ。しばらく揺れるから、気をつけてね」

 俺はシートベルトを調節して、体をしっかり固定させた。
 スピードが上がったことで、水飛沫は勢いを増した。車が進むにつれて、飛沫は水の壁となり、どんどんせり上がってくる。

「……あの、なんか、水かき分けて進んでるみたいなんですけど」
「うん。モーターボートに乗っている気分だよね!」
「いや、あの、今どこ走ってんですか?」
「どこって、水の上?」
「……は? 水陸両用なんですか? この車」
「うん。スゴイよね!!」

 ……いや、確かにスゴイけど。水陸両用とか、そんなことはどうでもいい。気になるのは、どうしてわざわざ水の上を走るのか? そして、この水域の正体である。

「水野サン、もしかしてココって……」

 仕事に関しては無知な俺も、さすがに見当はついていた。
 もし俺の想像通りなら、この運搬車は今、を渡っている。

「ココって川ですよね? いわゆる、世の境目の……」
[『ボクのしごと、キミのしごと』第5話~世の境目~]の続きを読む
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